PROJECT #01

羽田空港から始まるJAL SMART AIRPORT
~未来の空港のあるべき姿に答えを~

KEYWORD.1

チェックインカウンターから搭乗ゲートに至るまでのデザイン、システムを一新。IT活用によるきめ細かなヒューマンサービスと、最新技術の活用による効率的で快適なセルフサービス実現する、JALが提供する空港の新しい形。

KEYWORD.2

チェックイン、手荷物預け、保安検査場、搭乗ゲートで、ストレスフリーを実現する「手続きの自動化」。その要として、JALは国内線で初めて「Self Baggage Drop(自動手荷物預入機)」を導入した。

KEYWORD.3

2020年夏に羽田空港がグランドオープン。国内基幹空港である札幌(新千歳)空港、大阪(伊丹)空港、福岡空港、沖縄(那覇)空港へ展開、さらに国内全空港で「JAL SMART AIRPORT」の実現を目指す。

PART01

ストレスフリーで快適な旅を実現する
JALが提供する新しい空港の形

近年、世界の空港は劇的に変化しており、そのキーワードの一つが「FAST TRAVEL」だ。搭乗までの一連の手続きや動線を、ITなど最新のテクノロジーを導入して効率化し、出入国かかる時間を短縮する試みである。JALは2018年から「FAST TRAVEL」の具現化に向けて動き出し、2019年1月、羽田空港国内線から始まるリニューアルプロジェクト「JAL SMART AIRPORT」を始動した。このプロジェクトに早期から関わってきたメンバーの一人が、空港企画部の大西康晴である。

「まず私たちが取り組んだのが、JAL SMART AIRPORTプロジェクトのコンセプトを明確にすることでした。検討を重ね、①スムーズにご移動いただけること ②落ち着いてお手続きいただけること ③手続き方法の選択肢が豊富であること ④ニーズに合わせたサポートがあること ⑤「旅全体」へのサポートがあること、の5つのコンセプトを策定。これらを実現するために、まず課題となったのが、空港出発ロビーにおける待ち列でした。待ち時間を最小化し、お客さまに空港での滞在時間を有意義に使っていただくことがプロジェクトを成功されるための第一歩だと考え、そのために導き出したのが先進テクノロジーによる手続きの自動化。手続きの自動化によって、手続きをスピーディに行うことができるだけでなく、手荷物預り対応に時間を要していたスタッフが付加価値のある別のサービスを提供することができます。

大西は、新しいカウンターのデザインの企画やレイアウトの決定を担当し、工事開始後は進捗管理、工事業者間の進行の段取りや工事スケジュールの調整など幅広い業務を担当した。特に空港におけるJALのシンボルであるカウンターデザインの企画は重要なテーマだった。大西は5つのコンセプトを満たすデザインの検討を進めていった。

「お客さまがストレスなくセルフサービスで手続きを行うために、お客さまにとって分かりやすいカウンター機能の表示が求められました。そのため視認性を高めたピクトグラムを多用しました。また、木の温もりや日本の文化・伝統を感じられるデザインを採用して訪日外国人の方にも「日本らしさ」を発信できるデザインにしました。従来と最も異なる点は、手続きの自動化によってカウンターに常駐するスタッフがいなくなること。スタッフはカウンターの外で『ロビーコンシェルジェ』としてお客さまをご案内し、手厚いサービスを希望されるお客さまにも適切に対応できるようにし、かつ旅全体のサポートなどの+αのサービスも可能としました」

大西は、入社後1年半、前所属部署で2年間、羽田空港での業務に従事しお客さまのご要望やスタッフの思いを間近で感じ取ってきた。この経験を最大限活かし、JAL SMART AIRPORTに取り組めていることに大きなやりがいを感じている。

「今回のプロジェクトはJALの空港サービスにおける将来の10年間を決めると言っても過言ではありません。入社した当時から、仕事を通じて日本と世界をつなぎ日本の素晴らしさを世界に発信したいと思っていた私にとって、それを実践できることに大きなやりがいと喜びを感じています」

JAL SMART AIRPORTの概要

ITの活用によるきめ細やかなヒューマンサービスと、最新技術の活用による効率的で快適なセルフサービスにより、新しい空港の形を提供。です。スマートに飛行機にお乗りいただけるよう、①スムーズにご移動いただけること ②落ち着いてお手続きいただけること ③手続き方法の選択肢が豊富であること ④ニーズに合わせたサポートがあること ⑤「旅全体」へのサポートがあることの5つのコンセプトを設定。

自動チェックイン機(イメージ)

Self Baggage Drop(イメージ)

PART02

ゼロからの挑戦にアサインされたのは
入社3年目の若手社員

大西の取り組みと同時並行で進められたのが、ストレスフリーを実現する「手続きの自動化」だ。自動化するタッチポイントは、チェックイン、手荷物預け、保安検査場、搭乗ゲートの4つ。JAL SMART AIRPORTでは、すべてのタッチポイントにおいて先端技術を導入し、ストレスフリーの実現を目指した。プロジェクトが始動して間もない2019年2月。メンバーにアサインされたのが、旅客業務改革推進部の当時入社2年目、三輪祥子だった。三輪は入社以来、新千歳空港で旅客ハンドリング業務に従事しており、プロジェクトへの参画は期待と不安が交錯するものだったと言う。

「空港業務において、最もお客さまからお叱りの声をいただいていたのが、手荷物預けカウンターの待ち時間と混雑でした。今回のプロジェクトへの参画は、私が現場で感じていた課題を解決するチャンスであり、新しいことに挑戦できるという期待が大きかったです。しかし、私は文系出身であり、ITやシステムに関する知見を持っていたわけではありません。ゼロからの挑戦で、不安もありましたが、同時に、若手にチャレンジできる機会を与えてくれるJALの風土も実感しました」

自動チェックイン機はお客さまとの最初のタッチポイントであり、その次に控える自動手荷物預け機へスムーズに誘導するという役割がある。今回の改修における最大のポイントは、お客さまご自身が手荷物にタグを取り付けるための「タグ発行機能」の追加。しかし、その機能を追加することは容易ではなかった。

「従来の手荷物預けカウンターでは、同行するお客さまの人数をスタッフが目視で確認して対応していました。例えば家族4人であれば、一人当たりの手荷物重量が制限の20㎏を超えても、トータルで80㎏内に収まれば超過料金は発生しませんが、これを今まではスタッフが手作業で計算していました。しかし、『手続きの自動化』を実現するためには、システムがそれぞれのお客さまが同行者かどうかを認識しなければいけません。そのような機能を自動チェックイン機でお客さまにわかり易く実装するため、システム仕様の決定に何度も何度も試行錯誤を重ねました。このように次々と出てくる課題に対して、お客さまそれぞれの情報をどのようにシステムに反映させるかが最も苦心した点です」

PART03

初の導入となるSelf Baggage Drop
その仕様と運用の最適化を目指して

三輪が担当した自動チェックイン機での手続きが終わると、お客さまはご自身で手荷物にタグを取り付けて、自動手荷物預入機=Self Baggage Dropへ手荷物を預け入れる。この手荷物預けにおける自動化を担当したのが、大西と同じく空港企画部に所属する槇裕作だ。

「手荷物預入ポイントは先進技術を導入するのに非常に苦労しました。JALはSelf Baggage Dropの導入実績がなく、まずはSelf Baggage Dropとはどういうものなのか、その理解から業務をスタートする必要があったのです。また、Self Baggage Dropの導入は、従来の手荷物預入の運用が根本的に変わることを意味します。それまでは、チェックインと手荷物預入は、カウンターで同時に処理されていました。しかし機器導入後は、それが明確に分かれるため、いかにお客さまにとってわかりやすく、使いやすいものにするか。機器の仕様と実際の運用の最適化が常にテーマとしてありました。そのため、機器開発メーカーへ運用も含めたJALの意図を明確に伝えるなど、メーカーによる機器の開発を適切にマネジメントしていくことも求められました」

さまざまな取り組みを通じて、JAL SMART AIRPORTがJALだけではなく空港全体のサービス向上を目指すものであり、ご利用になるすべてのお客さまのためのプロジェクトであるという強い想いが伝わり、空港ビル会社の許可を得ることができた小俣らはプロジェクトを次のフェーズに進めることを可能にした。

「羽田空港は、2020年4月には国際線が増便され、国内線を利用する訪日外国人も増えることが予想されます。東京オリンピック・パラリンピックの開催もあり、2020年は羽田空港が世界中から注目される時期。プロジェクトの構想段階から関わり、このタイミングでJAL SMART AIRPORTをリリースできることに達成感を感じています。しかし、最も大切なのは、お客さまに展開したとき、「JALを選んで良かった」と感じてもらえるかどうか。今後の維持管理のみならず、効果測定を踏まえてプロジェクトをブラッシュアップしていきたいと考えています」

PART04

共有スペースである空港で
新たなチャレンジをする難しさ

JAL SMART AIRPORTを推進する上で、忘れてはいけないのが「空港は共用スペース」であるということだ。空港に並ぶ各エアラインのカウンターは、空港ターミナルビルを管理する会社(以下 空港ビル会社)から賃貸しているが、カウンター以外は共用スペースとなる。新型自動チェックイン機とSelf Baggage Dropは、共用スペースに設置されることになり、設置には空港ビル会社との調整が必要となる。プロジェクト構想段階から空港ビル会社との交渉を担当した施設企画部の小俣洋介は、交渉の厳しさについてこう語る。

「まず私たちが希望したのが、機器を設置するためにカウンターから離れた共用スペースの使用許可をいただくこと。しかし前例がなく、他エアラインや飲食店等へ与える影響の観点から容易には納得いただけませんでした。さらに問題だったのが、当該共有スペースが災害時などの緊急時の避難場所とされており、固定物の設置が禁止されていることです。私はそれらの課題を大西らと協働し、空港ビル会社にご理解・ご納得いただけるまで交渉を続けました。交渉の際に用いた説明材料の一つがシミュレーション動画です。混雑のピーク時でも、IT機器とヒューマンサービスを融合させれば待ち列ゼロを実現することを、動画で提示しました。また、待ち列のベルトパーテーションが不必要になること、案内板を紙からデジタルサイネージに変更することで設置数を削減できること、さらにモックアップ(実物大模型)を制作して機器を実体験してもらうなど、空港ビル会社にJAL SMART AIRPORTを実施することでお客様のストレスフリーを確実に実現できることをご理解いただけるように力を尽くしました。結果、JALが目指したいレイアウトの実現だけでなく、空港ビル会社が担保したい緊急時の避難場所等の確保も実現することができ、当プロジェクトに対する空港ビル会社の支援をより一層厚くすることができました」

さまざまな取り組みを通じて、JAL SMART AIRPORTがJALだけではなく空港全体のサービス向上を目指すものであり、ご利用になるすべてのお客さまのためのプロジェクトであるという強い想いが伝わり、空港ビル会社の許可を得ることができた小俣らはプロジェクトを次のフェーズに進めることを可能にした。

「羽田空港は、2020年4月には国際線が増便され、国内線を利用する訪日外国人も増えることが予想されます。東京オリンピック・パラリンピックの開催もあり、2020年は羽田空港が世界中から注目される時期。プロジェクトの構想段階から関わり、このタイミングでJAL SMART AIRPORTをリリースできることに達成感を感じています。しかし、最も大切なのは、お客さまに展開したとき、「JALを選んで良かった」と感じてもらえるかどうか。今後の維持管理のみならず、効果測定を踏まえてプロジェクトをブラッシュアップしていきたいと考えています」

PART05

進化するテクノロジーを
お客さまのためにどう活かせるか

約2年間にわたって取り組んできたJAL SMART AIRPORTプロジェクトは、2020年2月上旬、羽田空港国内線にて部分供用を開始。同年夏のグランドオープンに向けた試験的供用と位置付けられており、今後は段階的にリニューアルしていく計画だ。同時進行で国内基幹空港である新千歳空港、伊丹空港、福岡空港、那覇空港へも展開する。将来的には、国内全空港でJAL SMART AIRPORTの展開を目指す。

「JALは決して『FAST TRAVEL』の先駆けというわけではなく、むしろやっと“世界のスタンダードに追いついた”というフェーズです。しかし、JALの取り組みが他社と決定的に異なるのが、単に業務効率化や省人化を図ったものではないという点です。視線の先には常にお客さまがいらっしゃいます」と大西は語る。

「テクノロジーは今後も進歩し、5GやAIなど各種ITにより空港サービスやそのあり方も大きく変わるでしょう。私たちには、それがお客さまに満足をもたらすものかを見極める責任があります。私たちにとって一番大切なことは、JALが提供するサービスをお客さまに満足いただくことです。手続きの自動化によって、スタッフはロビーコンシェルジェとして、タブレット端末を手に多言語での対応をするなど、これまで以上にお客さまに寄り添った質の高いヒューマンサービスを提供します。手続きの自動化とは、JALにとってこれまで培ってきたおもてなしの心を今まで以上に具現化するきっかけとなるものと考えています」と槇は語る。

「FAST TRAVEL」自体も進化し続けている。現在、世界の空港で検討が進んでいるのが、チェックインから搭乗まで、手続きの各段階における本人確認、パスポート・搭乗券の確認を、「顔認証」により一元化する取り組みだ。お客さまは事前にパスポート情報と搭乗券情報、顔のデータを登録すれば、「顔認証」により保安検査と搭乗ゲートを通過することができる。こうした進化する「FAST TRAVEL」に対して、大西は「顔認証」を含め、近い将来の空港のあり方を見据えた検討を進めているという。

「ストレスフリーに向けたインフラが整備されJAL SMART AIRPORTはやっとスタート地点につきました。「空港をどういった場所にするか」という問いに今後は答えを出していく必要があります。完全な手続きの自動化により、お客さまは空港での滞在時間を有意義に使うことができます。空港という空間でお客さまによりご満足いただくため、どのようなサービス・価値を提供すべきか。2020年夏でJAL SMART AIRPORTプロジェクトは一つの節目を迎えますが、このプロジェクトに終わりはないと思っています」

現在プロジェクトは、お客さまのハンドリングを行いつつ、2020年6月完成に向けて、急ピッチで工事が進められている。管理ビル会社をはじめ、カウンターやサイン、各種機器の設置等、多くの工事関係者と意思疎通、相互理解を図り、速やかな工事進捗を実現することが今のテーマだ。イレギュラーの発生などで計画通りに工事が進捗しないことも少なくないが、メンバーは知恵を絞り、汗をかき、熱い想いを持って取り組んでいる。そこにあるのは、「JAL SMART AIRPORT」の展開が、今まで以上に多くのお客さまに支持され、愛されるエアラインへ進化するトリガーになる、という確信にほかならない。

大西 康晴 空港企画部
旅客・制度企画グループ
2008年入社
法学部 法律学科卒

三輪 祥子 旅客業務改革推進部
スマートエアポート推進グループ
2017年入社
法学部卒

槇 裕作 空港企画部
旅客・制度企画グループ
2015年入社
法学部 法律学科卒

小俣 洋介 施設企画部
企画・渉外グループ
2013年入社
工学部 建築学科卒