PROJECT #02

日本から最も近いヨーロッパへ
~成長戦略を担う、新たな目的地の開拓~

KEYWORD.1

JALの成長戦略を担う一大プロジェクト、成田とウラジオストクを結ぶ新規路線の開設。マーケット調査から見えてきたのは、韓国、台湾に続く、安価で近場の第3のDestinationとなりうるポテンシャルだった。

KEYWORD.2

いかにして認知度を向上させるか。旅行会社と協業してパッケージツアーを造成するなど、ウラジオストクをプロモーションすることで観光を主とした需要を喚起。予約の受付開始後、実績も堅調に推移している。

KEYWORD.3

新規路線開設において重要な基盤となる空港の受入体制の構築や現地支店の新規開設を限られた期間で実現させ、2020年2月28日に予定通り、新規路線成田―ウラジオストク線の初便が就航した。

PART01

歴史・芸術・食・文化が集積した
日本から最も近いヨーロッパ

2020年2月28日、成田空港から「ボーイング737」が極東のロシア・ウラジオストクに向けて飛び立った。JALが数年前から検討を続けてきた新規路線「成田―ウラジオストク線」の初便である。JALは国際提携によるネットワークの拡充を進める一方、自社運航便での新規路線の開設に積極的に取り組んできた。直近では、2019年3月に「成田―シアトル線」を開設し、2020年3月29日には「成田―ベンガルール(インド)線」を開設予定。今回の「成田―ウラジオストク線」も、この積極的な新規路線開設の流れの中にある。2017年8月、日本国籍旅客は電子ビザでロシア極東地域に入国することが認められた。電子ビザ導入後、ウラジオストクへの日本人訪問者数は、前年比で約175%の伸びを見せている。「成田―ウラジオストク線」新規開設プロジェクトはこうしたトレンドを背景に始動し、そのプロジェクトメンバーの一人が、国際路線事業部の安藤大輔である。

「まずプロジェクトはマーケット分析から始まりました。私自身ウラジオストクは馴染みのある都市ではなかったため、現地に何度も足を運びました。調査を重ね現地と交流する中でわかってきたのが、ウラジオストクが歴史・芸術・食・文化が集積した魅力ある街であるということ。『日本から最も近いヨーロッパ』として大きなポテンシャルを秘めていると感じました。さらに調査を進めていくと、街にあふれるヨーロッパ調のフォトジェニックな観光スポットは、若い女性に非常に人気があり、特に韓国人の訪問は年間約20万人にも達していました。日本からウラジオストクまではわずか2時間半。韓国、台湾に続く、安価で近場の第3のDestinationになりうる手応えを感じました」

「成田―ウラジオストク線」はビジネスではなく観光需要を主とした路線だ。観光需要は、イベントや天候、季節によって変動しやすいため、現地に安定した複数の観光スポットがあることは重要な要素となる。安藤は、このマーケットで何が日本人に支持されるのか、観光資源・商材を必死で探したという。

「シベリア鉄道の起点である美術館のような佇まいを見せる『ウラジオストク駅』、レトロな建物のレストランやカフェが並び、ヨーロッパらしい賑わいをみせるメインストリート『アドミラーラ・フォーキナ通り』、かつて戦略的軍港でもあったウラジオストクを偲べる『要塞博物館』、世界的バレエ団の一つであるマリインスキー・バレエの公演を鑑賞できる『マリインスキー劇場』など、日本人にも支持されるであろう豊富な観光スポットがありました。また、新鮮な海産物をはじめとする豊富な食材を使った伝統的なロシア料理からグルジアなどの多国籍料理など、多種多様な食文化を楽しむこともできます。ウラジオストクの魅力に触れるたびに、このプロジェクトを必ず成功させたいという想いが強くなりました」

PART02

商品造成とプロモーションの取り組み
予約開始と共に大きな反響を呼ぶ

安藤とともに、初期段階からプロジェクトメンバーとして新規路線開設に取り組んできたのが、本店 国際旅客販売推進部の原田祐来である。今回の新規路線開設における原田の役割は、就航後の「成田―ウラジオストク線」における収入最大化の実現だった。

「ウラジオストクを訪れた際、これほど日本から近い場所でヨーロッパを味わえることに率直に驚きました。ウラジオストクは、渡航先としての認知度は高くありませんが、それは成長の余地があるということでもあります。新しい感動をお客さまに提供し、支持される路線にしたいという想いのもと、帰国後は販売という視点から、ターゲットとなるお客さまの分析を徹底的に行い新規路線プロモーション活動に着手しました」

安藤はマーケット分析とそれに伴う収支予測、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販促(Promotion)の4P視点での新規路線の戦略策定を進め、原田は、競合他社の価格を見据えながら航空券の価格を決定し、旅行会社と協業してパッケージツアーなどの観光商品を造成し、プロモーション活動を開始した。

「企業サイトやFacebookなどの自社の広告媒体や機内でのプロモーション、交通広告なども活用し、主に若い女性層をターゲットにして新規路線ウラジオストクの魅力を訴求していきました。また、ウラジオストクは『観光需要』をメインと考えていましたが、東方経済フォーラムをはじめとした日露間のビジネス需要にも可能性を感じました。ビジネス需要が見込まれる企業を分析し、利用促進に向けた調整を行いました。こうした取り組みが実を結び、2019年11月上旬、『成田―ウラジオストク線』の予約受付が開始されました」

新規路線の反響は大きく、予約は順調に推移、幸先のいいスタートを切っている。「時期が観光シーズンとなる夏場であることに加え、就航記念として価格を抑えたこと、各種マイルキャンペーン等が功を奏したのではないか」と原田は語る。

「新規路線は2020年2月28日~3月28日は週3便、同年3月29日の便より毎日運航となりますが、今後、冬場の需要喚起も含め、安定的に旅客数を確保していくことが課題の一つです。現地施設との協業を通じた販促施策の実施、ウラジオストク現地の方たちに向けたプロモーション活動などを通じて、路線運営を安定的な軌道に乗せていきたいと考えています」

PART03

ウラジオストク空港の生産体制の整備
施設検査の承認、そして初便就航

現地空港の受入体制の整備も新規路線開設における重要な取り組みの一つだ。航空業界では「生産体制」と呼ばれているもので、この構築を日本から支援したのが、空港業務部の黒澤伸吾である。着任したのは、2019年10月。5ヶ月という短期間で生産体制を整備し、2020年2月28日の初便就航に漕ぎ着けた。

「着任時は、まだ空港に事務所(空港所)はなく、現地スタッフもわずか2名。現地の委託業務に関する契約手続きの支援から空港業務に関する事前準備まで、各作業のスケジュール管理を行い、急ピッチで受入体制の整備を進めました。山積する業務の中で最も力を注いだのが『人』です。一便一便の運航は空港の各セクションのプロフェッショナルによって支えられていますが、特に委託先、現地採用スタッフについては、人を配置するだけではなく、教育や訓練が重要です。部門ごとの教育受講者の採用スケジュール、教官のスケジュールを調整するなど、ウラジオストク空港で勤務する『人』の育成に力を注ぎました」

重要なポイントの一つとなったのが、2020年2月上旬に行われた国交省・航空局による施設検査だった。これは、旅客サービスや運航管理等について国交省からの承認を得るための検査で、黒澤が取り組んできたウラジオストク空港の生産体制への評価でもあった。

「検査は2日間にわたって行われ、無事に承認が下りました。現地スタッフと共に万全の準備をして臨んだので、自信はありましたが承認されたときは肩の荷がおりました。この承認の3週間後に初便が就航し、JALとして初めて、成田とウラジオシトクという点と点を線で結ぶことができたのです。新規路線開設に携わったことで非常に貴重な経験を積むことができたと感じています」

就航後も、黒澤は空港所の安定的運営を日本から支援している。そんな黒澤が今、最も力を入れていることの一つが、JALとしてのサービス品質の維持向上。文化や慣習が異なる海外の空港においても、JALのサービスを体現する人材の育成に、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えている。

PART04

ゴールではなくスタート
長く愛される路線を目指して

2019年10月下旬、新規路線就航に向けたJALの空港所開設のため、ウラジオストクに赴任したのが木村貴俊である。入社時からの希望だった新規路線開設や海外支店運営に携わることができるということで大きなチャンスだと感じた。

「現地へ赴任した後に、私が最初に着手したことの一つは、ウラジオストク支店で共に業務する日本人スタッフの生活基盤を整えることでした。ウラジオストク支店には、機材整備、ステーションオペレーション(運航管理)、旅客サービス、旅客販売営業など、それぞれのプロフェッショナルが日本から私の後に赴任してきます。私は彼らを受け入れる準備の一つとして、住居をはじめとした生活基盤の整備に奔走しました。また、ロシア人スタッフの採用や就業規則の策定、航空局による就航前検査の対応から就航記念パーティ・初便就航セレモニーの準備まで、東京本社や同じロシアのモスクワ支店と密に連携して、新規路線開設までの充実した3ヶ月を過ごしました」

就航後は、支店の総務業務全般を担いつつ、日々の安全運航を堅持する組織づくりに加え、ロシアのお客さまに対してのJALのプレゼンスを向上するための施策立案など、営業面のサポート業務も行っている。初めての海外赴任で感じたのは、日本とロシアの間に横たわる価値観や文化、習慣などの違いだと木村は語る。相手を理解し尊重することの重要性を痛感し、相手の懐に入っていくコミュニケーションを心掛ける中で新たな発見もあったという。

「ウラジオストクの人たちは、JALの新規就航を心から歓迎してくれていると感じます。ロシア人はとてもフレンドリーで、日露関係を表現する際『ロシアの片思い』と言うこともあるように、多くのロシア人が日本に親しみを感じています。そのため文化・慣習の違いはあっても、JAL就航に向けさまざまな協力をしてくれます。海外赴任を経験したことで、国と国、街と街、人と人をつなぐエアラインという存在、そこで働くことの醍醐味を改めて実感しています。これから長く愛される路線とするため、全力で支店運営に取り組んできたいと考えています」

JALはこれまで半世紀以上にわたり、日本―ロシア(モスクワ)間で定期便を運航してきた。今回の極東ロシアへの新規路線就航によるネットワークの拡充は、ウラジオストクの人が東南アジアや北米などへ渡航する、あるいは日本からロシア中部地域へ渡航する際のトランジット需要にも応えられるもの。また、ヒト・モノの流動が活発化し、交流がさらに促進されることで日露間の経済発展への貢献も期待される。それは日本のプレゼンス向上に寄与するものだ。多くの関係者の想いを乗せて就航した新規路線「成田―ウラジオストク線」。今後、いかに持続的に成長させていくか。JALの新たな挑戦が始まっている。

安藤 大輔 国際路線事業部
欧州路線グループ
2005年入社
社会科学部 社会科学科卒

原田 祐来 本店国際旅客販売推進部
企画業務グループ
2013年入社
政治学 アメリカ政治専攻(米国大学卒)

黒澤 伸吾 空港業務部
業務グループ
2010年入社
法経学部 総合政策学科卒

木村 貴俊 ウラジオストク支店
総務セクション
2014年入社
経済学部 経済学科卒